解説ガイド · 事業報告書

個人事業主でも事業報告書の提出は必要 — 法人前提の欄はどうするか

最終更新: 2026年9月 / 根拠: 貨物自動車運送事業報告規則 第2条、第1号様式の備考、近畿運輸局「事業報告書・事業実績報告書作成の手引き」

「法人じゃないから関係ない」と思われがちですが、個人事業主にも提出義務があります。一方で様式を開くと、資本金・発行済株式総数・主な株主・役員という、 どう見ても法人を前提にした欄が並んでいます。 この記事では、何が決まっていて、何が決まっていないのかをはっきり分けて整理します。 決まっていないことを決まっているかのようには書きません。

1. 提出義務があることは、はっきりしています

規則は、報告義務を負う者を「貨物自動車運送事業者」とだけ定めています。

貨物自動車運送事業者(貨物軽自動車運送事業者を除く。)は、 次の表の第一欄に掲げる事業者の区分に応じ、(中略)同表の第三欄に掲げる報告書を、 同表の第四欄に掲げる時期に提出しなければならない。貨物自動車運送事業報告規則 第2条第1項

法人か個人かで分けていません。近畿運輸局の手引きも、対象事業者をこう書いています。

一般貨物自動車運送事業を経営している者すべて(事業規模、法人・個人に関係なく)近畿運輸局「事業報告書・事業実績報告書作成の手引き」対象事業者
車両が少なくても、赤字でも、提出義務は変わりません。出さなかった場合の扱い(100万円以下の罰金、行政処分、事業拡大時の認可要件)も、 法人と同じです。未提出の罰則と実害をご覧ください。

2. 提出物と期限も、法人と同じです

報告書中身期限
事業報告書① 事業概況報告書(第1号様式)
② 貸借対照表
③ 損益計算書
④ 損益明細表(第2号様式)
⑤ 人件費明細表(第3号様式)
毎事業年度の経過後100日以内
事業実績報告書第4号様式のみ毎年7月10日まで

個人事業主の場合、事業年度は1月1日から12月31日になるのが通常です。 そうすると事業報告書の期限は翌年4月10日(12月31日の翌日から100日目)になります。 確定申告(3月15日)を済ませてから作れば間に合う順序です。 自社の期限は決算月別の早見表で確認できます。

3. 貸借対照表・損益計算書は自社のもので足ります

②と③については様式の定めがありません。関東運輸局が配布するExcelの該当シートには、運輸局自身がこう書いています。

様式は特に定まっておりません。自社のものを添付願います。関東運輸局 配布様式(事業報告書のExcel)「損益計算書 及び 貸借対照表」シート内の記載

詳しくは貸借対照表・損益計算書は自社のものでよいに まとめました。

※青色申告で貸借対照表を作成していない場合など、手元に該当する書類が無いことがあります。 どう扱うかについての定めは見当たらないため、所轄の運輸支局にご確認ください。

4. ここからが本題 — 法人前提の欄は定めがありません

第1号様式には、個人事業主に当てはまらない欄が4つあります。

欄個人事業主だと
資本金の額又は出資の総額資本金という概念がない
発行済株式総数株式を発行していない
主な株主株主がいない
役員(取締役・会計参与・監査役)役員がいない

では何を書くのか。調べた範囲では、定めが見当たりません。

該当する事項が存在しない以上、書きようがありません。空欄のままにするか「該当なし」と記載するかは、運用によります。提出前に所轄の運輸支局にご確認ください。ここを推測で埋めると、事実と違う内容を記載することになりかねません。

※「虚偽の報告」は未報告より重く扱われます(初違反60日車・再違反120日車)。 分からない欄を想像で埋めるより、確認してから出すほうが確実です。

5. 従業員数の欄には事業主本人を数えるのか

これも定めはありませんが、様式の備考1の文言が手がかりになります。

従業員数は、給与支払の対象となった月別支給人員 (臨時雇用員にあっては、25人日を1人として換算)の該当事業年度における合計人員を 当該事業年度の月数で除した人数とすること。第1号様式 備考1

数えるのは「給与支払の対象となった」人員とされています。 個人事業主本人は自分に給与を支払う立場ではないため、 この文言をそのまま読めば本人は含まれないことになります。 ただしこれは条文の文言からの読み方であって、明文の定めではありません。従業員数は第3号様式の延人員から算出する仕組みになっているため、 本人を含めるかどうかで両方の様式の数字が動きます。あわせて確認してください。

従業員数の算出そのものは事業概況報告書(第1号様式)の書き方で 詳しく扱っています。

6. 第2号様式・第3号様式に、個人と法人の違いはありません

損益明細表(第2号様式)と人件費明細表(第3号様式)は、 科目ごとに金額を入れていく表です。様式の上で法人と個人を分ける記載はありません。決算の数字を科目に振り分けていけば足ります。

ひとつだけ注意が要るのは、第3号様式の「役員報酬」の行です。 個人事業主に役員報酬はありませんが、事業主本人の取り分をここに入れてよいかについての定めは見当たりません。税務上、個人事業主が自分に支払う給与という扱いはないため、 従業員に支払った人件費とは性質が異なります。ここも所轄にご確認ください。

書き方は損益明細表(第2号様式)の書き方と人件費明細表(第3号様式)の書き方をご覧ください。 倉庫業などを兼営している場合は兼業がある場合の按分ルールも必要になります。

まとめ

決まっていること
提出義務ある(法人・個人を問わない)
提出物法人と同じ5点(+ 第4号様式)
期限法人と同じ(決算後100日以内 / 7月10日)
貸借対照表・損益計算書自社のものでよい
罰則・行政処分法人と同じ
決まっていないこと(要確認)
資本金・株式・株主・役員の欄空欄か「該当なし」か
従業員数に本人を含めるか備考1の文言からは含まれないと読めるが、明文なし
第3号様式の役員報酬の扱い事業主本人の取り分をどうするか

決まっていない3点は、提出前に所轄の運輸支局へ電話で聞けば済む話です。1年に1回の書類なので、初回だけ確認してメモに残しておけば、翌年からは迷いません。 提出先と連絡先は報告書の提出方法にまとめています。

期限の管理だけでも仕組みにする

提出期限チェッカー(無料)に決算月を入れると、 事業報告書と事業実績報告書の次回期限と残り日数が出ます。 第4号様式は第4号様式 作成ツール(無料)で集計できます。

出典(一次情報)

※本記事は一般的な解説です。本文中で「定めが見当たらない」と記載した点は、 管轄により運用が異なる可能性があります。個別の事案は所轄運輸支局または行政書士にご相談ください。

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