解説ガイド · 事業報告書

兼業がある場合の事業報告書 — 按分のルールと配分基準

最終更新: 2026年7月 / 根拠: 事業報告関連書類の記入要領(全日本トラック協会掲載)、「貨物自動車運送事業に係る収益及び費用並びに固定資産の配分基準について」(平成2年11月29日 貨経第44号・貨陸第133号)ほか

運送業のほかに倉庫業・貨物利用運送・車両整備などの事業を営んでいる場合、 事業報告書の損益明細表・人件費明細表には一般貨物自動車運送事業に係る分だけを記載します。 そのため、複数の事業に共通する収益・費用・人員を「按分(配分)」する作業が必要になり、 実務では事業報告書作成で最も手間のかかる工程と言われます。 この記事では、按分の根拠となるルールの所在と、科目ごとの配分基準を原文に基づいて整理します。

按分のルールはどこに書いてある?(様式の備考ではありません)

まず押さえたいのは、第1号〜第3号様式の備考には「按分」「配分」の記載がないことです (備考を探しても見つからないのは正常です)。按分の指示は、様式とともに配布される「事業報告関連書類の記入要領」にあります。記入要領は次のように定めています。

つまり按分の実体的なルールは、平成2年の「配分基準」通達に定められています。 なお、毎年7月10日期限の事業実績報告書(第4号様式)側は、 様式の備考自体に「共通部門に従事している従業員のうち当該事業分として適正な基準により配分した人数」と明記されています。

通達が定める科目別の配分基準

配分基準通達は、勘定科目ごとに次のような基準を定めています(主なもの)。

科目配分基準(通達)
運送費の人件費従業員の実働人日数の比率(整備工は車両修繕費の比率)
燃料油脂費当該事業在籍車両の総走行キロの比率
車両減価償却費同上(走行キロの比率)
施設使用料実在延日車数の比率
事故賠償費・道路使用料・フェリー利用料当該事業に係る実額
その他(運送費)輸送トン数(作業トン数)の比率
一般管理費運送費(減価償却費を控除した金額)の比率
営業外収益営業収益の比率

※通達原文は全日本トラック協会・福岡県トラック協会が公開する記入要領内の転載で確認したものです(出典は記事末尾)。

重要: 兼業がごく小さい場合は按分しなくてよい(少額特例)

通達には次の定めがあります: 「当該収益、費用及び固定資産が極めて少額である場合、又は主たる事業に比較して兼営する事業の割合が小さいため、 配分基準の算定が困難である場合には、その金額を主たる事業に計上するものとする」。 つまり、兼業がごく小規模なら無理に按分せず、主たる事業側にまとめて計上することが認められています。

実務の進め方(3ステップ)

  1. 直課できるものを先に分ける … 部門別に売上・原価を把握できている科目は、その実額をそのまま使います(按分は不要)。 実務家の解説でも「部門別に把握できていればそれを転記、できないものだけ按分」という手順が一般的です。
  2. 共通する収益・費用を基準で配分する … 直課できない共通費(本社経費・共用車両の燃料費など)を、上表の配分基準で運送事業分に切り分けます。
  3. 様式間の整合を確認する … 記入要領は 「第1号様式の一般貨物の平均従業員数=第3号様式の支給延人員(人月)合計÷12」と一致することを求めています。 あわせて第1号様式「経営している事業」欄の営業収入構成比率が合計100%になるか、 添付する損益計算書(一般貨物/その他事業の区分)と明細表の数字がつながるかも確認しましょう。

計算例: 燃料油脂費を走行キロ比で配分する

通達基準どおりの、最もシンプルな例です。

よくある質問

売上高の比率で按分してもいいですか?

通達は上表のとおり科目ごとの基準を定めています。実務の解説では、実態に合う合理的な基準 (売上構成比・車両別・人員別など)で整理する例も紹介されていますが、 まずは通達の基準を確認し、自社の実態でどう配分すべきか迷う場合は 所轄の運輸支局または税理士・行政書士に確認するのが確実です。

様式の備考に按分のことが書いていないのですが

第1号〜第3号様式の備考には按分の記載はありません。根拠は「記入要領」と平成2年の配分基準通達です(本記事前半参照)。

兼業がほんの少しだけあります。全部按分が必要?

兼営事業の割合が小さく配分基準の算定が困難な場合は、主たる事業に計上してよいとされています(少額特例・前述)。

期限管理とあわせて

按分を含む事業報告書の提出期限は決算後100日以内です(決算月別早見表)。期限チェッカー(無料)で自社の期限を確認できます。 なお当サイトでは、行政書士の先生方の声を受けて按分計算を支援する機能の開発を進めています。

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出典(一次情報)

※平成2年11月29日 貨経第44号・貨陸第133号の通達文は、上記トラック協会の記入要領に転載されたものを確認しています。 本記事は一般的な解説であり、個別の按分方法は所轄運輸支局または税理士・行政書士にご確認ください。