解説ガイド · 事業報告書
事業報告書に添える貸借対照表・損益計算書は自社のものでよい
最終更新: 2026年9月 / 根拠: 貨物自動車運送事業報告規則 第2条第2項、関東運輸局配布の様式(Excel)の記載、近畿運輸局「事業報告書・事業実績報告書作成の手引き」
運輸局が配布する事業報告書のExcelを開くと、4枚目に「損益計算書 及び 貸借対照表」という、罫線だけが引かれたシートがあります。 科目名も何も印字されていないため、「この枠を自分で埋めるのか」と手が止まります。結論から言うと、埋める必要はありません。決算で作った自社のものを添えれば足ります。
1. そもそも添付が必要なのか — 必要です
「事業報告書」は1枚の様式ではなく、5点をまとめた呼び名です。規則がそう定めています。
前項の事業報告書は、事業概況報告書(第一号様式)並びに貸借対照表、損益計算書及び次に掲げる財務計算に関する明細表とする。
一 一般貨物自動車運送事業損益明細表(第二号様式)
二 一般貨物自動車運送事業人件費明細表(第三号様式)貨物自動車運送事業報告規則 第2条第2項
貸借対照表と損益計算書は、条文に名指しで書かれています。「添付書類」ではなく、事業報告書そのものを構成する5点のうちの2点です。忘れると書類が揃いません。
2. 様式は定まっていない — 運輸局自身がそう書いています
関東運輸局が配布している事業報告書のExcelには、 4枚目のシート上に運輸局が置いたテキストボックスがあり、次のように書かれています。
様式は特に定まっておりません。自社のものを添付願います。関東運輸局 配布様式(事業報告書のExcel)「損益計算書 及び 貸借対照表」シート内の記載
近畿運輸局の手引きも、同じことを記入のポイントとして挙げています。
貸借対照表と損益計算書については事業者独自のものでもよい。近畿運輸局「事業報告書・事業実績報告書作成の手引き」3 記入に当たってのポイント
※ここで引用したのは関東運輸局と近畿運輸局の記載です。運用は管轄により異なる可能性があるため、 不安な場合は所轄の運輸支局にご確認ください。
3. 「損益計算書」と「第2号様式」はどう違うのか
いちばん混乱しやすいのがここです。損益計算書も第2号様式も収益と費用の表なので、 「同じものを2回書くのか」と感じます。役割が違います。
| 損益計算書 | 損益明細表(第2号様式) | |
|---|---|---|
| 対象 | 会社全体(全事業の合計) | 一般貨物自動車運送事業の分 |
| 科目 | 自社の決算の科目 | 様式で決まっている科目 |
| 作る人 | 決算で作成済み | 報告書のために作る |
| 兼業があるとき | 兼業分も含んだ金額 | 按分して運送事業分だけを記載 |
様式の正式名称が「一般貨物自動車運送事業損益明細表」であることが、 そのまま答えになっています。運送事業の分だけを取り出して明細にする表です。
倉庫業や利用運送などを兼営している場合、決算書の金額をそのまま第2号様式に写すと誤りになります。 科目ごとに運送事業分を切り出す必要があり、その基準は通達で決まっています。 考え方は兼業がある場合の按分ルールと配分基準にまとめています。
4. 提出前に合っているか確かめる
損益計算書(全社)と第2号様式(運送事業分)は別物ですが、無関係ではありません。 運送事業しか行っていなければ、営業収益・営業費用の合計は原則として一致します。 一致しない場合は、どちらかに写し間違いがあるか、決算書に運送事業以外の収支が混じっています。
兼業がある場合は一致しません。その代わり「運送事業分 + 兼業分 = 全社額」が科目ごとに成り立っているかを確かめます。
また、第2号様式の人件費と第3号様式の合計も一致していなければなりません。 様式をまたぐ検算については人件費明細表(第3号様式)の書き方で 取り上げています。
よくある質問
4枚目のシートは空のまま提出してよいですか
自社の貸借対照表・損益計算書を別に添えるのであれば、そのシートを使う必要はありません。 ただし「添えない」のは別の話です。規則が求めているのは書類そのものなので、 自社のものを必ず一緒に提出してください。
科目が様式と違っていても大丈夫ですか
貸借対照表・損益計算書には様式の定めがありません。自社の決算の科目のままで構いません。 科目が決まっているのは第2号様式・第3号様式のほうです。
電子データで出せますか
令和7年12月1日から、e-Gov電子申請での提出が対象手続になっています。 詳しくは報告書の提出方法(窓口・郵送・オンライン)をご覧ください。
赤字でも提出は必要ですか
必要です。提出義務は業績と関係ありません。 出さなかった場合の扱いは未提出の罰則と実害にまとめています。
作るところを楽にする
兼業がある場合の按分は兼業按分計算ツール(無料)で、 配分基準通達の科目別基準どおりに計算できます。 提出期限は提出期限チェッカー(無料)で確認できます。
出典(一次情報)
- 貨物自動車運送事業報告規則(e-Gov法令検索) — 第2条第2項(事業報告書を構成する5点)
- 関東運輸局「事業報告書、事業実績報告書の提出について」 — 配布されているExcelの「損益計算書 及び 貸借対照表」シートに「様式は特に定まっておりません。自社のものを添付願います。」との記載
- 近畿運輸局「事業報告書・事業実績報告書作成の手引き」 — 「貸借対照表と損益計算書については事業者独自のものでもよい。」
※本記事は一般的な解説です。運用の細部は管轄の運輸局・運輸支局により異なる場合があります。 個別の事案は所轄運輸支局または行政書士にご相談ください。