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自動車運送事業経営指標とは — 2017年版で廃刊。いま業界平均を見る方法

最終更新: 2026年10月 / 根拠: 国立国会図書館サーチの書誌、国土交通省「数字でみる自動車2024」、 全日本トラック協会「経営分析報告書 令和5年度決算版」、日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2025年度調査)

「自動車運送事業経営指標」は、国土交通省自動車局が編集していた年刊の統計書です。 実働率・実車率から人件費率、自己資本比率まで、運送事業の経営数値を車両規模別にまとめたもので、 「業界平均はいくつか」を調べると今でもこの名前に行き着きます。ただし、この本は2017年版を最後に廃刊になっています。この記事では、何が載っていたのか、いまは何を見ればよいのか、 そしてあなたが毎年出している事業報告書がその「業界平均」の元データになっていることを、 一次資料で確認しながら整理します。

1. 「自動車運送事業経営指標」とは何だったのか

国立国会図書館の書誌には、次のように記録されています。

書名自動車運送事業経営指標
編集国土交通省自動車局 ほか(旧 運輸省自動車交通局)
刊行年刊
旧書名財務年報
収録年度昭和38年度 〜 平成29年度
刊行状況「2017年版限り廃刊」

最終の2017年版は、2018年6月11日に日本自動車会議所から発行されました(A4判・157ページ、定価4,277円)。 政府刊行物のオンライン書店では「品切・絶版」です。つまり、紙でも電子でも、いま一般の人が新しい版を手に入れる方法はありません。

※国土交通省の統計ページ「数字でみる自動車2024」には、「トラックの走行キロ当たり原価の推移」(平成8〜30年度)が 「『自動車運送事業経営指標』国土交通省物流・自動車局による」との注つきで載っています。 省内の集計は冊子の廃刊後も続いていた形跡がありますが、経営指標そのものは公開されていません。

何が載っていたか

地方運輸局の統計資料に転載された平成29年度の表から、構成を再現すると次のとおりです。車両規模別(例: 11〜20両)に、1日車当たり・1走行キロ当たり・従業員1人当たりの数値が並びます。

区分指標
輸送効率実働率、実車率、日車当たり輸送量・走行キロ・実車キロ・営業収益・営業費・営業損益、走行キロ当たり営業収益・営業費・営業損益、従業員1人当たり輸送量・走行キロ・営業収益・営業費・営業損益・実在車両数
総費用の構成運送費(人件費・経費)、一般管理費(人件費・経費)、営業外費用の構成比
走行キロ当たり原価人件費、燃料費、修繕費、固定資産償却費、その他経費、一般管理費
収益性総資本経常利益率、営業収益経常利益率、総資本回転率
生産性従業員付加価値額、1人当たり人件費、付加価値率、労働分配率
財務流動比率、固定比率、固定資産対長期資本比率、自己資本比率
見覚えのある項目ばかりのはずです。実働率・実車率・走行キロ・実車キロ・輸送量は第4号様式に書く数字、 人件費・燃料費・修繕費・償却費・一般管理費は第2号様式の科目、 財務指標は添付する貸借対照表から出る数字です。 この統計は、事業者が提出する報告書を集計したものでした。

2. いま業界平均を見るなら — 公開されている2つの資料

廃刊後、運送業の経営数値を誰でも見られる資料は2つあります。 性格がまったく違うので、何を知りたいかで使い分けます。

全日本トラック協会
「経営分析報告書」
日本政策金融公庫
「小企業の経営指標調査」
元データ会員事業者が提出した事業報告書・事業実績報告書公庫(国民生活事業)の融資先の決算書
対象一般貨物自動車運送事業者(特積・霊柩を除く)。令和5年度は2,451者従業者50人未満の法人。2025年度調査で一般貨物自動車運送業738社
区分車両規模5区分 × 地域9区分業種別、従業者規模別(1〜4人/5〜9人/10〜19人/20〜49人)
科目第2号様式と同じ科目(運送費・一般管理費の内訳まで)一般的な財務比率(売上高営業利益率、人件費対売上高比率など)
公開範囲概要版・車両台数別/地域別概要は公開。詳細は会員専用全文公開
更新毎年(令和5年度決算版は令和7年3月)運輸業は隔年(次回2028年8月予定)

全日本トラック協会「経営分析報告書」

平成4年度から毎年作成されています。何を元にしているかは、報告書自身が明記しています。

この経営分析報告書は、会員事業者から提出された「一般貨物自動車運送事業報告書」(以下、「事業報告書」という)を基に データをコンピュータ処理し、各種の「業界指標」を作成しております。全日本トラック協会「経営分析報告書 令和5年度決算版(車両台数別・地域別概要)」1. 実施概要

令和5年度決算版では、事業報告書を提出した3,412者のうち、次の基準に当てはまる2,451者を集計しています。

  1. 特別積合せ貨物運送事業者、霊柩運送事業者を除く一般貨物自動車運送事業者
  2. 一般貨物自動車運送事業(本業)の売上比率が80%以上の事業者
  3. 傭車売上比率が20%以下の事業者
  4. 日車当りの輸送トン数と営業収益が一定基準内の事業者
  5. 事業報告書等のデータに不備のない事業者
  6. 各項目において一定範囲内の値の事業者

公開されている「車両台数別・地域別概要」には、第2号様式とまったく同じ科目構成で 1者平均の損益明細表が載っています(運送収入・運送雑収、人件費・燃料油脂費・修繕費・減価償却費・保険料・施設使用料・ 自動車リース料・施設賦課税・事故賠償費・道路使用料・フェリーボート利用料・その他(傭車費等)、一般管理費)。 さらに走行キロ・実車キロ・期末実在車両数・延実在車両数・延実働車両数・輸送トン数も、車両規模別・地域別に載っています。

参考に、令和5年度決算版の全体(2,451者の1者平均)の数字を挙げます。

項目令和3年度令和4年度令和5年度
営業収益(1者平均・千円)243,207253,830264,007
営業損益率▲0.9%0.0%0.6%
経常損益率0.6%1.8%2.2%
営業利益を計上した事業者の割合39%42%51%
経常利益を計上した事業者の割合54%57%61%

※上の数字は「本業売上80%以上・傭車20%以下」などの基準で抽出された事業者の1者平均です。 同じ報告書内でも、10台以下と101台以上では水準が大きく異なります(車両規模別の表が公開されています)。 自社と比べるときは、必ず同じ車両規模の列を見てください。

報告書は「希望者には全国や地域(ブロック)の同規模事業者と比較し、問題点とその改善策をまとめた『企業診断書』を作成している」 とも述べています(令和4年度決算版 概要版)。会員であれば、自社の事業報告書を同規模と比べてもらう窓口があるということです。

日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」

こちらは運送業に限らない全業種の調査で、公庫が融資した従業者50人未満の法人の決算書を業種別に集計したものです。 「調査対象業種は隔年度で替え、調査年度の最新の決算書に基づき集計する」とされ、運輸業は2025年度調査(2026年8月掲載)が最新です。

一般貨物自動車運送業(738社)の主な指標は次のとおりです。

指標平均値中央値黒字かつ自己資本プラス企業の平均
売上高営業利益率▲1.4%▲0.3%3.9%
売上高経常利益率▲0.5%0.3%4.0%
人件費対売上高比率38.3%38.1%35.4%
自己資本比率▲29.9%▲10.3%19.6%
損益分岐点比率116.8%102.3%96.5%

※平均値と中央値が大きく離れている指標(自己資本比率など)は、一部の企業の数値に平均が引っ張られています。自社の位置を知るなら中央値のほうが実感に近いことが多いです。 また、この調査は「融資を受けている小企業」が母集団なので、トラック協会の数字とは前提が違います。2つを混ぜて比べないでください。

3. あなたの事業報告書は、こう使われている

ここまでで分かるとおり、業界の経営指標は、事業者が運輸局に出した事業報告書・事業実績報告書の積み上げです。トラック協会は「事業報告書等のデータに不備のない事業者」だけを集計対象にしています。 つまり、科目の振り分けが雑な報告書は、業界指標から外されます。

第2号様式の科目を正確に振り分けることには、自社の数字を業界と比べられるようにするという実利があります。たとえば傭車費を「その他」の内書きに正しく入れていれば、トラック協会の傭車費率と自社を直接比べられます。 人件費を運送費と一般管理費に分けていれば、現場の人件費率を同規模と比べられます。 振り分けのルールは損益明細表(第2号様式)の書き方と人件費明細表(第3号様式)の書き方にまとめています。

4. 自社の経営指標を、報告書の数字から出す

かつての経営指標の主要項目は、事業報告書・事業実績報告書に書く数字だけで計算できます。 業界と比べる前に、まず自社の値を出しておくと、報告書の検算にもなります。

指標計算数字の出どころ
実働率延実働車両数 ÷ 延実在車両数第4号様式
実車率実車キロ ÷ 走行キロ第4号様式
日車当たり営業収益営業収益 ÷ 延実働車両数第2号様式 ÷ 第4号様式
走行キロ当たり原価営業費用 ÷ 走行キロ第2号様式 ÷ 第4号様式
人件費率(運送費の人件費 + 一般管理費の人件費) ÷ 営業収益第2号様式
営業損益率営業損益 ÷ 営業収益第2号様式
自己資本比率純資産 ÷ 総資産貸借対照表

※第2号様式は事業年度(決算期)、第4号様式は4月1日〜3月31日が対象期間です。 決算月が3月以外の事業者は、期間がずれている点に注意してください(日車当たり・キロ当たりの指標は目安になります)。 実働率・実車率の考え方と、100%を超えたら入力ミスという検算は実働率・実車率とはにあります。

よくある質問

「自動車運送事業経営指標」の最新版はどこで買えますか

買えません。国立国会図書館の書誌に「2017年版限り廃刊」とあり、最終版(2018年6月発行)も政府刊行物の書店で品切・絶版です。 過去の版は国立国会図書館で閲覧できます(所蔵は昭和59年度〜2016年版など)。

業界平均と比べて自社の実働率が低いのですが、問題ですか

それだけでは判断できません。実働率は荷主の稼働日・運行形態・休車の扱いで大きく動きます。 公表統計は年度・集計対象・抽出基準が資料ごとに違うため、比べるなら同じ資料の同じ車両規模の列と、できれば自社の前年との比較を優先してください。

事業報告書を出していないと、業界指標に影響しますか

業界指標は提出された報告書から作られているので、出していない事業者の数字は含まれません。 それ以前に、未提出には罰則と実害があります。未提出の罰則と実害をご覧ください。

トラック協会の非会員でも経営分析報告書は見られますか

概要版と「車両台数別・地域別概要」はウェブで公開されています(出典欄のリンク)。詳細版は会員専用です。

比べる前に、正確に作る

兼業がある場合の按分は兼業按分計算ツール(無料)で、配分基準どおりに運送事業分を切り出せます。 第4号様式は作成ツール(無料)で実働率・実車率まで自動計算してExcelに出力できます。

出典(一次情報)

※本記事は公表資料の所在と読み方の解説です。掲載した数値は各資料の集計基準のもとでの値であり、 資料間の単純比較はできません。経営判断は税理士・中小企業診断士等にご相談ください。

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